TECHNOLOGY技術情報

ピュアキレイザーの特徴・構造

促進酸化処理法(AOP)の利用による特徴

  • 酸素は塩素の20倍以上、オゾン単体の5倍以上

  • 効率よく有機物を分解

  • 副生物も生成しにくいので、環境にやさしい

  • 分解した有機物は
    二酸化炭素と
    水、窒素ガスになる

ピュアキレイザーは、オゾン、光触媒、紫外線の3つを一体化させる事で、
単独作用の数倍の相乗効果で除菌と浄化(有機物分解)を行います。

特許ピュアキレイザー三位一体構造

ピュアキレイザーは通常循環系統の中で
ろ過器の2 次側(ろ過器を通過した後)にバイパス配管により設 置します。
ろ過器で処理された水はピュアキレイザー の中をワンパス(一方通行に通過するだけ)によって有機物の分解やレジオネラ属菌などの除菌を行います。

ピュアキレイザーの除菌・浄化能力

ラジカルとは、不対電子を持つ不安定な物質で反応性が非常に高く、その中でも、OHラジカルが最も高い反応性を示します。その酸化還元電位は2.81Vとフッ素に次ぐ酸化力を持ちます。また分子としてはOとHのみの構成のため、反応後は水、二酸化炭素等に無害化されます。
オゾンは空気中では塩素の約1.65倍、水中で約7倍の高い殺菌力を持ちます。ほとんどの微生物やウイルスの他アメーバなどに対しても殺菌作用があります。
紫外線は380nm以下の波長の光線で、ピュアキレイザーRでは強力な殺菌力を持つ254nmの殺菌灯を使用しています。この付近の波長は細菌・糸状菌・ウィルス・藻類に対して高い殺菌力があり、水環境・空気環境を問わず広く用いられています。
光触媒は、光(光量子)によって荷電分離が発生し酸化や還元反応の触媒作用を示します。このとき水があるとOHラジカルが発生し、殺菌と有機物の分解ができます。

処理別TOCの残存率比較

  1. オゾンの特長として特筆すべきは、水の浄化能力(清澄作用)です。水の中に溶け込んでしまっているような有機物は塩素系薬剤や通常のろ過装置では除去することができません。この有機物が水を濁らせ悪臭の原因となり、ろ過器の機能低下の原因ともなります。ピュアキレイザーRの促進酸化処理法(AOP)は水の中に溶け込んでいる有機物を水と二酸化炭素に分解してしまいますから、常にキレイな水環境をご提供することが可能です。

試験データ

TOC試験による促進酸化の効果(グラフ①)

  • TOC試験による促進酸化の効果(グラフ①)

塩素

次亜塩素酸ナトリウムを通常使用時の0.4ppm〜1.2ppmの範囲で調整。 この濃度ではほとんど有機物の分解は出来なかった。

オゾンのみ

オゾンのみでは時間は掛かったが、有機物の分解は出来た。

オゾン+UVランプ

一般的な促進酸化の方法。
オゾン単独の2.5倍程度の早さで有機物の分解が完全に出来た。

ピュアキレイザー

オゾン単独の5倍以上、UVランプとの促進酸化の2倍以上の早さで有機物の分解が完全に出来た。

この現象はオゾンにUVランプを当てた事により、オゾンよりも酸化力の強いOH-(OHラジカル)が生成されたためです。(促進酸化)この酸化力を比較するために酸化還元電位を下記に示します。

物質名 酸化還元電位
OH- 2.81 eV
オゾン 2.07 eV
次亜塩素酸ナトリウム 1.49 eV

ピュアキレイザーによる温度別溶存酸素濃度の変化(グラフ②)

  • ピュアキレイザーによる温度別溶存酸素濃度の変化(グラフ②)

このグラフの曲線は、温度による飽和溶存酸素の量です。

ピュアキレイザーは自然吸気のエジェクター方式と加圧空気を用いてミキシングポンプでエアを混合するタイプの両方があります。グラフ内の20℃までは、このエジェクターにより空気を混合した時の溶存酸素量で、ミキシングポンプを利用した溶存酸素です。43℃の時は、過飽和状態まで溶存酸素が増加します。

また、原料に酸素を用いると溶存酸素は飛躍的に増加します。

ピュアキレイザーZPV-0型の有機物分解能力と溶存酸素量(グラフ③)

  • ピュアキレイザーZPV-0型の有機物分解能力と溶存酸素量(グラフ③)

このグラフは、養液栽培に用いた雨水をピュアキレイザーに通した時の分析結果です。

水温11℃の時の飽和溶存酸素を越える溶存酸素が確保でき、更に、養液中の有機物は減少します。
植物の生長には、有機物は不要で、無機成分である、窒素、リン酸、カリ、等17種(又は18種)の成分を吸収し生長します。

有機物が増加すると水を腐食させ、腐敗臭を出す原因になります。
また、水が濁り、圃場の清掃が困難になる等の悪影響があります。

農業分野(養液栽培用)ピュアキレイザーの特徴 ZPV-0型

養液栽培にピュアキレイザーを利用する効果

① ピュアキレイザーが植物に良い訳

オゾンが有機物と菌をやっつけ、更に紫外線により、強力に分解し、その後は、オゾンが酸素に戻り、養液中に溶存酸素を付加することで、根を活性化させます

  • ピュアキレイザーあり [写真1]

    溶存酸素と整菌作用で、培地から出た根も勢いよく生長している。

  • ピュアキレイザーなし [写真2]

    溶存酸素のみを付加した養液では、酸素も菌も多くなり、培地から出た根は、菌により腐食してしまう。

② 肥料の再利用が可能!

ピュアキレイザーで養液を循環して利用するためで、肥料の節約効果があります。
従来のように垂れ流しで利用した場合、下水道や土中の富栄養化が進み、河川の汚染につながります。

③ 病気の蔓延を防ぐ

菌も有機物であるため、ピュアキレイザーで除菌できます。いちご萎黄菌の除菌効果をグラフに示します。

④ 栽培ベットの清浄化

養液中の有機物を促進酸化で効率良く分解するため栽培ベッドに汚れが付きにくく、清掃が楽になります。

⑤ 収穫量の増加

根が腐らず、活性が良好なため、養分の吸収が一般的な栽培よりも良くなり、植物の樹勢が強くなります。このため、いちごの様な果実では、果実の大きさが大きくなりかつ甘くなり、更に、収穫期間が伸ばせるため、収穫量の増加が容易に可能になります。
写真3は、ピュアキレイザーを用いた湛液型のトマトの定植から1ヶ月の根の状態と、写真4は、ピュアキレイザーを用いていない湛液型の1ヶ月後の根の状態です。比較するまでもなく、ピュアキレイザーを用いた方が根の生長が顕著に良くなります。

  • ピュアキレイザーあり [写真3]
  • ピュアキレイザーなし [写真4]

⑥ 農薬の削減

樹勢が良いと病気にも掛かりにくくなります。このため、農薬を蒔く回数が減り、減農薬が可能となります。更に、冬場の様なビニールハウスを締め切って利用する場合、薄いオゾンガス(排オゾン)*1が浮遊するうどん粉病の胞子を浄化し、うどん粉病の繁殖が激減します。
また、根が腐らない為、コバエやダニが寄りつかなくなり、外虫用の農薬も減農薬が可能となります。
*1:オゾン濃度は0.1ppm(環境基準値同等)程度となります。

  • ピュアキレイザーあり
  • ピュアキレイザーなし

オゾン、光触媒、紫外線ランプの影響

① 光触媒と紫外線ランプ

光触媒は、紫外線ランプを照射すると光触媒の表面で酸化効果の高いOH-(ヒドロキシルラジカル)が生成されますが、これは、非常に酸化力の高い物質で、酸化処理した後は水と二酸化炭素になります。この為、植物には何の影響も与えません。養液の除菌、浄化のみが出来ます。

② オゾン

オゾンは、上記のOH-と同様酸化力の高い物質ですが、多少の残留性を示します。ただし、酸化処理した後は水と二酸化炭素になり、植物に対しては、除菌、浄化と溶存酸素の付加として働きます。

③ 酸化による影響

オゾン、光触媒共に酸化する力(有機物の浄化も酸化による力)が強いため、表に示す、MnとFeが酸化マンガン酸化鉄として析出されることで、この2つの要素が減少します。よって、時々この2要素については、補給する必要があります。

農業分野(養液栽培)トマトとイチゴの実証試験

東洋バルヴでは、環境を重視した循環型農業システムの研究に取り組み、まず、トマトとイチゴの養液栽培において、本装置の導入効果を確認するための実証試験を開始しました。なお、試験は長野県内3ヶ所の生産現場と1ヶ所の教育機関の協力のもとに実施したものです。(期間 2007/2〜現在)

試験で得られた主な成果。

  1. 循環液(培養液)の不純物(有機物)の分解
  2. 病原菌の除菌(分解)
  3. 溶存酸素の供給と根の活性化
  4. 水質への影響

不純物(溶存有機物)の分解

養液栽培で雨水や地下水等を用水として利用するときには、あらかじめ用水の内容を吟味する必要があります。とくに溶解する不純物は、しばしば作物に悪影響を与えますので、除去(分解)する必要があります。イチゴの生産現場の実証試験例によると、雨水由来の着色溶存有機物はピュアキレイザーの導入で浄化されることが明らかです(富竹貯水槽の写真)

野菜等の根による分泌物、微生物の代謝産物、有機性培地の溶出物には、生育を阻害する各種の有害性有機物が含まれます。それが継続的に培養液に混入しますと、作物は正常な生育を全うすることができません(写真参照、トマトのエチレン障害)。

  •  

有害性有機物は有機酸、リグニンなどの溶存有機成分と、エチレン、メタンなどの有害ガス成分とに分けられます。本装置による有害性有機物の分解のメカニズムは、生成オゾン及びヒドロキシラジカルの強力な酸化力によるものです。そのとき、分解の対象となる主たる有機物は培養液に溶存する各種の有機化合物です、とくに鎖状の易分解性有機物は比較的容易に分解され、ここでは、溶存する全有機物(TOC)として表示しています。

(TOC)はピュアキレイザーの導入で明らかに減少します(図参照)。なお、農薬、フェノール性化合物などの難分解性有機化合物の分解に与えるオゾンやヒドロキシラジカルの影響は未検討でありますが、相当な時間がかかると思います。また、大気中に揮散しやすいガス成分や不溶性の有機物の分解はあまり期待できないかもしれません。

除菌+溶存酸素付加は生長促進に貢献

病原菌の除菌

養液栽培で発生する病害には、培養液を介して伝搬する病害と培地に蓄積して発病する病害とに分かれます。養液栽培では、病原菌が培養液中に入ると、増殖した病原菌が培養液により媒介されて作物は大きな被害を受けます。また、ロックウールのように培地を繰り返して使用する方式では、培地に病原菌が蓄積し、土壌病害と同様な連作障害を生じます。

養液栽培で発生する根部を侵す主な病害は、トマトでは、灰色疫病、根腐病、モザイク病など、キュウリでは疫病、灰色疫病、根腐病など、メロンでは疫病つる割病などが知られています。これらの病原菌は有害性有機物同様、オゾンやヒドロキシラジカルの酸化力で分解(除菌)されますが、オゾンの適正濃度、効果を示す原菌の菌密度などについては不明の点が残されています。

ここではイチゴの萎黄病がピュアキレイザー処理で除菌される例を示します(図参照)

溶存酸素の供給

ピュアキレイザーで生成されるオゾンは、オゾン、酸素分子、一部ヒドロキシラジカルに変換されます。水中に溶け込んだ分子状の酸素を溶存酸素と呼びます。溶存酸素濃度は、水温、pH、有機物量、溶質などに左右されます。しかし、ピュアキレイザーで水処理した溶存酸素量は、いずれの条件において飽和溶存酸素量をやや上回ることが確かめられています。

養液栽培では培養液の溶存酸素濃度が野菜の生育に大きな影響を与えます。溶存酸素の不足は正常な野菜生育に決定的な阻害因子として働きます。野菜が低酸素濃度下(嫌気状態)で強度のストレスを受けると、根の呼吸速度が減少し、萎凋症状を招き、果実収量は大幅に減少します。根の低酸素条件では、光合成によって生成されたグルコースがEMP系と醗酵系によって乳酸あるいはアルコールなどに代謝され、ATPの転換エネルギー効率が好気的呼吸のおよそ20分の1に減少します。

すなわち、酸素が少ないと、野菜の基質(グルコース)の消費量は大きいが、ATPの生成効率がきわめて低くなるということです。これが高酸素濃度下(好気的状態)に移されると、ATPの生成効率は著しく高まるとともに、基質の消費も抑制されます。このことが野菜など作物生育にとって好気的環境が嫌気的環境より有利であることの理由となります。

培養液の溶存酸素濃度をある程度維持することによって、生育が促進され、収量はかなり増大します(トマト、イチゴの図参照)。通気組織が発達してないトマト、イチゴなどの野菜では、培養液の嫌気的環境を避けるために、培養液に酸素を人為的に供給し、必要な呼吸を手助けすることが重要となります。

ピュアキレイザーの導入によって、トマトの培養液の溶存酸素濃度は栽培期間中、飽和溶存酸素濃度をやや上回るレベルで維持されます。

通常、養液栽培の培養液および培地には、多種多様の有用あるいは有害な微生物が存在します。これらの微生物は培養液や栽培環境などにより変動します。主に培地中の物質代謝を担う微生物の生命を維持するには、野菜と同様に酸素が必要となります。
好気的条件では、微生物は呼吸系からの電子を酸素の電子受容体に移行させ呼吸を維持します。その反応式は下記のとおりです。

O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O

このように、溶存酸素の供給は、培養液の微生物活性を高揚しますが、藍藻など光合成細菌の旺盛な繁殖がみられる夏場では、その弊害を防ぐために、培地、給液タンク、チューブなどを直射日光から遮蔽する必要があります。

他方、嫌気的条件では、微生物は電子を酸素以外の電子受容体に移行させ、呼吸を維持します。その反応式は以下のとおりです。

① NO3- + 2H+ + 2e- → H2O + NO2-
(さらに、N2OまたはN2にまでに還元される)
② MnO2 + 4H+ + 2e-  → Mn2+ + 2H2O
③ Fe(OH)3 + 3H+ + 1e- → Fe2+ + 3H2O
④ SO42- + 10H+ + 8e- → H2S + 4H2O
⑤ CO2 + 8H+ + 8e- → CH4 + 2H2O 
⑥ その他 ;

有機物の嫌気的分解によって、一方では酸素呼吸を維持し、他方では有機酸類などの有毒な有機化合物、あるいはエチレンなどの植物生長制御物質を含む炭化水素類を生成します。

このように嫌気的条件(酸素不足)では、硫化水素などの有害ガス及びマンガンなどの呼吸阻害物質等が生成されやすくなります。その結果、植物生育は抑制されるばかりでなく、いろいろな種類の病原菌が繁殖し、根の活性が低下することと相まって病原菌に感染しやすくなります。ここでは、イチゴのうどん粉病、トマトのモザイク病の例を示します。

  • イチゴのうどん粉病
  • トマトのモザイク病

オゾン生成過程で生じる溶存酸素は、このような悪い環境を改善し、根の活性を高めて野菜生育を促進し、病原菌による感染力を抑制すると考えられます。

ところで、飽和状態をかなり上回る高レベルの溶存酸素濃度で養液栽培を続けると、野菜が過繁茂になったり、糖度が落ちたりするなどの果実品質の低下があるといわれます。悪影響を与える高濃度の溶存酸素がどの程度のレベルにあるかは不明ですが、栽培期間中、培養液の溶存酸素をほぼ飽和溶存酸素濃度に維持できる本装置は、高収量と高品質の野菜生産を同時に達成できることをイチゴの生産現場で確かめられます。

根の活力向上

有害性有機物の分解、病原菌の除菌、継続的な溶存酸素の供給と相まって、野菜の初期生育が促進され、生育量が大幅に増大することはすでに述べました。一方、ピュアキレイザー導入区のトマトやイチゴの根をみますと、根量が多いばかりでなく、健康的で美しい根が確認できます。(トマトとイチゴの写真参照)

根の美しさや健康具合を感性として言葉でどう表現するかはとても難しいですが、トマトの活発な蒸散(葉からの水分の放散)による損失を、遮根シート上の毛根(不定根)が毛管液ばかりでなく、空気中の水蒸気からもなんとか捕獲しようとする健気な振舞いとして表現できます。写真で示すように、その健気な振舞いとは、試験・毛管区の逆立ちする毛根とそれに付着する真珠のような水滴こそがその証左となるでしょう。

水質への影響

ピュアキレイザーで発生するオゾン、ヒドロキシラジカルが、溶存有機物(TOC)の酸化分解に効果的であることは、前に述べたとおりです。一方、トマトやイチゴの試験例に限ってみると、強力な酸化力を有するオゾン、ヒドロキシラジカルが窒素、リン酸、カリウムなどの無機養分に及ぼす影響はほとんどないとみてよいでしょう。しかし、微量要素として培養液に添加されるマンガン及び鉄は、しだいに低下の傾向を示します(イチゴ、トマトの図参照)。これは、植物による両元素の吸収がとくに向上するということではなく、水酸化鉄、二酸化マンガンなどの生成沈殿物の影響ではないかと思われます。

なお、トマトの養液栽培試験によれば、ピュアキレイザー導入区の養液の液温は常に、対照区(無導入)よりも3〜4℃高く維持されることが明らかです。これは主に、液中での酸化反応による熱エネルギーの生成と深く関連すると考えられます。

ピュアキレイザー導入の意義

いまピュアキレイザーは、農業分野で水浄化装置として一定の評価が得られようとしています。ピュアキレイザーの水浄化能力は、大きく二つに分かれます。一つは作物生育に応じて循環液へしだいに蓄積されてくる有機性の生育阻害物質(各種有機酸、病原菌など)を、オゾンやヒドロキシラジカルによって酸化分解し、除去することであります。もう一つはオゾンやヒドロキシラジカルが酸化剤として働くとき放出される酸素を、溶存酸素として培養液に飽和状態で蓄積でき、栽培作物の根量やその活性を高め、養分の吸収効率を増大させます。また、作物に蓄積された光合成産物(糖)の化学エネルギー(呼吸)への変換効率を向上させます。このことにより、作物は生育が著しく促進され、栽培期間が大幅に短縮されることから、水、肥料、農薬の大幅な削減が期待できます。